手元を傾けたときの、あの澄んだ反射。秋田の工房「MINASE」を沖縄へ迎えた理由。
山城時計店パルコシティ店が惚れ込んだ、手作業の金属造形と手元の美学
箱を開けて、スタッフでルーペを覗き込みました。「パーツの奥の奥まで、本当に綺麗に磨かれている」
私たち山城時計店パルコシティ店に、秋田県皆瀬(みなせ)の工房から待ちに待った時計が届きました。正規取扱店として皆様にお届けしている「MINASE(ミナセ)」です。
届いた時計を検品しようとスタッフが集まり、手にとってルーペを覗き込んだとき、自然と声が上がりました。針のフチや文字盤の段差、さらにはケースの細かなスリットの奥に至るまで、手作業で丁寧に歪みのない鏡面へと磨き上げられていたからです。隅々まで行き届いた手仕事の密度に、時計を扱う私たち自身が深く引き込まれました。
腕時計には、歴史ある名門の伝統美や最新のハイテク機構など、それぞれのブランドに素晴らしい魅力と楽しさがあります。その中でMINASEが持つ個性は、どこまでも「手作業による造形の美しさと、金属の質感」を突き詰めている点にあります。
普段の装いによく馴染む端正な佇まいでありながら、ふと手首を傾けた瞬間、金属のエッジが驚くほど澄んだ光を返してきます。デスクワークの合間や移動中など、日常の何気ない瞬間にふと手元を見て「いい作りだな」と静かに嬉しくなる。そんな道具としての確かな手応えを持っています。
「遠目にはとても端正で落ち着いた時計ですが、
近づいて見るほどに、職人がかけた時間と工夫の深さが伝わってきます。」
もともと時計メーカーではなく、髪の毛よりも細い穴を開ける切削工具メーカーから始まったからこそ、外装の加工や磨きに対して独自のこだわりと技術が息づいています。
私たちがこの時計を沖縄の皆様にご紹介したいと思った理由は、大きくふたつあります。ひとつは、あの澄んだ光を生み出す「下地からの研磨」。そしてもうひとつは、何十年先も直しながら使い続けられる「独自の構造」です。
まずは、思わずルーペで見惚れてしまったあの綺麗な反射の秘密から、職人の手元を少し覗くようにご紹介していきます。
手元で傾けたとき、光の筋が真っ直ぐに走りませんか?
店頭でMINASEをお手に取っていただいたとき、私たちが「ぜひ照明にかざしてみてください」とお声がけする理由があります。
時計の金属面をピカピカに光らせるだけなら、実は機械のバフがけでいくらでもツヤを出せます。けれど、多くの時計は手元でゆっくり傾けてみると、映り込んだ蛍光灯の直線や窓枠の景色が、わずかに波打つように歪んで見えてしまいます。
MINASEを傾けたときにハッとするのは、光の筋が一本、定規を当てたかのように真っ直ぐ、スーッとエッジを駆け抜けていくところです。鏡として景色を歪みなく映し出す、あの独特の透明感。その秘密が、最後の仕上げに入る前の下地作り「ザラツ研磨」にあります。
この作業、実はどんなに技術が進んでも機械任せの全自動にはできません。回転する円盤の横側に金属パーツを押し当て、職人が指先で感じる「熱」と「摩擦の抵抗」だけを頼りに、ミクロン単位で面を削り出していきます。
強く押しすぎればパーツの角が落ちて丸くなり、角度がコンマ数度ブレるだけで面が歪んでしまう。ケースを構成するほんの小さな1パーツを研磨するだけで、熟練の職人でも息を詰めて90分近く向き合い続けます。
表から見える広い面だけでなく、普段は影になるような側面のすき間や、小さなファセットの奥まで徹底して磨き抜かれています。だからこそ、手元を少し傾けただけで、周囲の光をスッと集めて涼やかな清潔感を放つのです。
ただ、これほど時間と手間をかけて磨き上げた金属も、何年も日常で愛用していればいつか小傷がつきます。そのとき「傷ついたから諦める」のではなく、もう一度この澄んだ光を蘇らせられるように作られていること。それが、次に続く「MORE構造」の本当の面白さです。
「何年も使って傷がついたら?」店頭でそう尋ねられたとき、自信を持ってお見せする構造があります。
店頭で実機をご覧いただいていると、「これだけ鏡面が綺麗だと、日常で使うのが少しもったいなく感じますね」と笑顔でおっしゃるお客様がいらっしゃいます。
お気に入りの時計ほど、特別な日だけでなく毎日の仕事や外出先へ連れ出したいもの。けれど、どれほど大切に扱っていても、手首を動かしていればデスクに擦れたり、ふとした瞬間に小さな擦り傷はついていきます。
一般的な時計の場合、傷を消そうとして何度も全体を磨き直すと、次第にケースの角が落ちて丸く「痩せて」しまいます。また、傷ついた一部分だけを取り替えたくても、ケースが一塊(一体成型)で作られているため、外装を丸ごと交換するような大掛かりな修理になってしまうことも少なくありません。
そこでMINASEがたどり着いたのが、独自の「MORE(Minase Original Rebuilding Equation)構造」です。着想のヒントになったのは、日本の伝統工芸である「組木細工」。釘や接着剤を使わずに複雑な木を組み合わせるように、外装のあらゆるパーツが精密なパズルのように噛み合わされています。
裏蓋のネジを緩めていくと、外側のケース枠やラグ、内側の文字盤ケースに至るまで、パーツ1個単位にまで完全に分解することができます。つまり、「深い傷がついてしまったそのパーツだけ」を取り出して、先ほどのザラツ研磨でもう一度エッジを立て直したり、何十年後かにどうしても必要な部品だけを最小単位で交換できるのです。
ブレスレットのコマにも、一般的な割ピンやネジピンは一切使われていません。小さな金属ブロック同士が精密に連動し、手首にしっとりと吸い付くような心地よい装着感を生み出しながら、将来にわたって1コマ単位での分解や再研磨ができるようになっています。
機械式時計の心臓部(ムーブメント)は、定期的に油を差し直せば何十年と動き続けます。MINASEはその先を見据えて、「心臓だけでなく、毎日手肌に触れる外装も一生涯、いや次の世代まで美しいまま受け継げるように」という思いでこの構造を作り上げました。
傷がついたら諦めるのではなく、共に過ごした時間の証として愛着を深めながら、いつかまた職人の手で最初の澄んだ輝きへと蘇らせる。この頼もしさがあるからこそ、MINASEは気兼ねなく毎日の相棒として愛用できるのです。
斜めから覗き込んだとき、文字盤が宙に浮いているように見えませんか?
店頭でMINASEを手首に乗せていただいたとき、正面から光の反射を確かめたあとに、ぜひ斜めや真横からも覗き込んでみてください。
文字盤と外側のケースの間にわずかな「すき間」があり、インデックスや針がまるで透明な空間の中に浮かんでいるような、不思議な奥行きに気づかれるはずです。
宇宙空間でステーションを構築するとき、パーツを個別に打ち上げて緻密にドッキングさせる手法がとられます。MINASEが挑んだのも、まさにそれと同じ発想でした。一体成型のケースに文字盤をはめ込むのではなく、すべてのパーツを分解した状態で設計し、最後にひとつへと結合させる「ケースインケース構造」です。
裏蓋、ムーブメントを包み込むインナーケース、美しい曲面を描くダイヤル、その上に配されるインデックスリング、そして全体を覆う外側のケース枠。それぞれが独立したパーツだからこそ、一体型ケースでは刃先や研磨盤が届かない「奥まった角」や「裏側の断面」にまで、職人が手作業でザラツ研磨を施すことができます。
1000分の1ミリの狂いも許されない精度で削り出されたパーツたちが組み合わさったとき、それぞれの鏡面が周囲の光を反射し合い、ひとつの時計の中に劇的な明暗のグラデーションを生み出します。
このケースインケース構造は、角型のFIVE WINDOWSやSEVEN WINDOWS、多面体のDIVIDOに至るまで、MINASEのすべての主要モデルに脈々と受け継がれています。
歪みのない平面を作る「ザラツ研磨」、一生直せる安心感を宿した「MORE構造」、そして光の空間を腕元に作り出す「ケースインケース構造」。
秋田の山奥で磨き抜かれたこの多面体と宙に浮く文字盤が、浦添西海岸から差し込む沖縄の自然光の下でどんな表情を見せるのか。ここからは、現在パルコシティ店で実際にお手に取っていただけるタイムピースを、1本ずつじっくりとご紹介していきます。
角型は腕から浮いてしまう。そう思っていた方にこそ、一度手首に乗せてほしい時計があります。
5枚の窓から差し込む自然光。シャツの袖口に吸い付くように収まる、角型の小宇宙。
角型(レクタンギュラー)の時計と聞くと、「クラシックすぎて普段着に合わせにくい」「ケースが平らで大きくて、腕から浮いてしまう」といったイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
店頭でこの「FIVE WINDOWS Mid」をご案内するとき、私たちスタッフが何よりもまず「ぜひ手首に乗せてみてください」とお伝えするのは、その先入観を手元で心地よく裏切ってくれるからです。
従来のレギュラーモデルから縦方向の長さを約15%コンパクト(横32mm × 縦40.3mm)に設計し直したことで、腕に乗せた瞬間、手首のゆるやかなカーブにすっきりと寄り添います。ジャケットの袖口にも引っかかることなく滑らかに収まり、男性はもちろん、適度な存在感を楽しみたい女性の手首にも驚くほど自然に馴染んでくれます。
この時計の最大の魅力は、正面だけでなくケースの「側面(左右)」と「裏蓋」まで、合計5枚のサファイアガラスで覆われている点です。
真横から差し込んだ周囲の光が、宙に浮いたインナーケースや立体的な針の側面を照らし出し、時計の内部に小さな建築物を見ているような陰影を生み出します。シックなグレーの文字盤は光の当たる角度によって淡いシルバーから深みのあるチャコールへと表情を変え、ビジネスのスーツから休日のリネンシャツまで、静かな品格を添えてくれます。
そして腕元を支えるのは、S3でもご紹介した特許「MORE構造」のステンレスブレスレット。ピンを使わずに組み上げられた無垢のコマは、手首の細い方や女性の手肌にもなめらかに馴染み、重さを感じさせない絶妙なバランスを実現しています。
毎日気兼ねなく身につけられて、何十年先も1コマ単位で分解して磨き直せる。「道具としての一生モノ」を腕元で実感していただける、MINASEを代表する1本です。
光を遮るものを、極限まで削ぎ落としたらどうなるか。MINASEが出したもうひとつの答え。
風防、裏蓋、そしてケース全周に配された7枚の窓。文字盤が完全に外の世界へ解き放たれる、角型の到達点。
先ほどご紹介した「FIVE WINDOWS Mid」が、シャツの袖口にスッと寄り添う知的な小宇宙だとすれば、この「SEVEN WINDOWS」は、手元で圧倒的な立体感と存在感を主張するフラッグシップの角型モデルです。
ケースサイズは横37.4mm × 縦46.5mm。適度な重厚感(約160g)を伴って腕に乗せた瞬間、時計というよりも「精緻に組み上げられた現代建築のモニュメント」を腕に巻いたかのような、心地よい緊張感が走ります。
名前に冠された「SEVEN WINDOWS」の通り、この時計には正面の風防と裏蓋に加え、ケースの全周を取り囲むように合計7枚ものサファイアガラスが隙間なく組み込まれています。
四方八方から自然光が惜しみなく差し込むため、宙に浮いたインナーケースの影が文字盤の奥深くに落ち、朝の澄んだ日差し、昼下がりの白い光、そして夕暮れの柔らかな陰影まで、時間の移ろいとともに文字盤の表情が刻々と変化していきます。
「正面からだけでなく、斜めからも真横からも、光が文字盤の裏側へと突き抜けていく。
これほど全方位から光の陰影を楽しめる角型時計は、世界中を探しても他にありません。」
窓の多さゆえにケースの剛性や防水性が心配になるかもしれませんが、協和精工が誇る1000分の1ミリ精度の切削と緻密な防水設計により、日常で気兼ねなく愛用できる5気圧防水をしっかりと確保しています。
そして吸い込まれるようなディープブルーの文字盤。光が強く当たると鮮やかなコバルトブルーへ輝き、日陰に入ると静寂のネイビーへと沈み込むその質感は、沖縄の豊かな海と空の表情にも重なります。もちろんブレスレットには特許「MORE構造」を採用。重さを手首全体へ分散させる吸い付くようなフィット感で、何十年先も1コマ単位で直しながら愛用し続けることができます。
一体成型の常識を打ち破る。4つの独立ラグが宙を掴む、多面体の旗艦。
ケースの上下、そして4つのラグを完全分割。すべての稜線にザラツ研磨を宿した、HiZシリーズのアイコン。
角型の「FIVE WINDOWS Mid」や「SEVEN WINDOWS」が静寂な建築美を宿しているとすれば、この「DIVIDO(ディヴィド)」は、光を鋭利に切り裂く彫刻のような緊張感を放つラウンド型のフラッグシップです。
店頭でショーケース越しに目を留められたお客様が、まず驚かれるのがラグ(ベルトとの接合部)の立体構造です。一般的な時計のようにケースの塊からラグを生やすのではなく、ケースの上下と4本のラグが完全に独立した別パーツとして削り出され、外側から精密に組み付けられています。
なぜここまで複雑な分割構造を採るのか。その理由は、S2でご紹介した「ザラツ研磨」をケースのあらゆる隅々にまで行き届かせるためです。
通常の時計では研磨盤が届かない入り組んだ角や隙間も、パーツ単体に分解できるからこそ、職人が素手で1面ずつ鏡面に磨き上げることができます。組み上がった多面体ケースは、手首のわずかな傾きに合わせて無数のファセットがキラリと光をリレーし、まるで宝石を散りばめたような眩い反射を生み出します。
「手首を少しひねるだけで、別々の角度を向いたエッジが一斉に光を放つ。
遠目に見ても『あ、普通の時計ではないな』と直感させる圧倒的な立体感があります。」
型番「VM14-M01NWH-SSB」に組み合わされたのは、日本の伝統工芸に着想を得た「雪平(ゆきひら)模様」のホワイト文字盤。和紙や削り出しの金属器を思わせる繊細な陰影が、冷たい金属のフレームの中に柔らかな温かみを与えています。
ケース径は手首に最も収まりの良い40.6mm、総厚11mm。堂々たる多面体でありながら、総重量は約134gと非常に軽快です。もちろんブレスレットには特許「MORE構造」が組み合わされており、駒の一つひとつが肌にしっとりと沿う極上の着け心地を約束してくれます。
【購入レポート】仕上げの美しさに惚れ込んで──店頭で生まれた出会いの記録
実際にパルコシティ店へご来店いただき、名門時計をご愛用されているお客様がなぜMINASEの仕上げをお選びになったのか。店頭でのリアルな対話とお客様の生声を、スタッフブログにてご紹介しています。
秋田の手仕事を、浦添西海岸の光の下で。
画面越しでは伝えきれない、金属の濃密な輝きと手首に吸い付くような装着感。職人が素手で磨き上げた歪みのない鏡面は、ご自身の手元に乗せて傾けた瞬間に、初めてその真価を現します。
パルコシティ店のカウンターにて、実機をご用意しております。ルーペで覗き込むミクロン単位の造形美を、どうぞ心ゆくまでお確かめください。